2013年4月23日火曜日

本日(4月24日)元財務省財務官=榊原英資氏の講演を聞きにいきました。

本日(4月24日)元財務省財務官である榊原英資氏の講演を聞きにいきました。
その内容を書き留めております。

外国人が多く出席していた会合でしたので、日本の良さをアピールしていた点
が印象的でした。
黒田日銀新総裁が4月4日に発表した「異次元」と言われる大胆な緩和策に対し
景気回復には有効であるとして、大枠では賛同していました。

ただし、2.0%のインフレターゲットを達成するのは、そもそも無理。
日本は成熟社会であり、すでに豊かな社会であるとし、将来的には、
1.0%成長程度で十分との見解を示しました。

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■黒田東彦日銀新総裁について
黒田日銀総裁は良く存じ上げています。
1997年7月~1999年7月まで大蔵省財務官であった私の後任の財務官が
日銀新総裁の黒田東彦氏(1999年7月~2003年1月)です。

私が財務官時代はに、黒田氏は直属の部下の国際金融局長でもありました。。
当時印象的だったのは、非常な読書家ということで、一緒に出張に言っても
飛行機の中で私はワインを飲んでいたが、彼はいつも本を読んでいました。

読書の対象とするジャンルも広く数学関連の本まで読んでおりました。
高校(東京教育大学附属駒場高校)の図書館の本をすべて読破した
というエピソードは、同時の同級生で有名たったと聞いたことがあります。

私が財務官、黒田氏が国際金融局長であった当時、国際金融の世界では、
・ジャン=クロード・トリシェ氏
 (現欧州中央銀行総裁、当時はフランス銀行総裁)
・ローレンス・サマーズ
  (現ハーバード大学教授、当時、米財務次官・財務長官)
・マリオ・ドラギ氏
 (現欧州中央銀行総裁、当時、イタリア財務省、民営化担当委員会議長等を歴任)
が活躍しており、私も黒田氏ともカウンタパートとして彼らと深い絆を持っております。

大蔵省・財務省出身者が日銀総裁になったことは過去に何回も事例があるが、
財務官経験者で日銀総裁に就任した黒田氏が初めてでです。
今回の日銀総裁の決定には、このポストには、国際的な人脈がより必要となって
きているという時代背景を反映しているということでしょう。

■日銀の量的緩和については賛同
黒田氏が就任直後に発表した量的緩和は、そのリリースの仕方も含め、
効果的であったと思います。
私は、黒田氏の政策スタンスにほぼ同調しております。
また、非常に効果的なアナウンスをしたと思います。市場が期待している以上
の緩和策を打ち出したことが、サプライズ効果を生んだということです。
我々が当時、為替介入に用いていた市場誘導方法と同様の手法です。

■2.0%のインフレターゲットについては反対
ただし、「2.0%インフレターゲット2.0%」については賛成できません。

小泉純一郎さんが首相であった、2002年~2007年の5年間の平均成長率は2.0%で、
成熟経済の日本にとっては非常に高い成長を維持・継続したと言えます。
これほど良い経済状況を持続してもその5年間は、物価上昇率はマイナスでした。

その理由は、日本の貿易の多くが中華圏であるということです。
中華圏とは、中国+台湾+香港の3地域であり、日本との貿易の30%を占めています。
中華圏との貿易拡大により、中華圏と日本の物価水準が緩やかではあるが、
収斂する方向に向っております。日本では物価が下がり、中国では物価が上昇する形で
収斂して行きます。 したがって、金融緩和をしても、デフレを終わらせることはできない
ということです。

他の先進国も物価が貿易相手の新興国の物価に収斂していくことは日本と共通の現象
が発生しております。

■成熟した日本社会について
この20年、物価の下落が継続しているが、本日ここに来ているの外国の方も、
日本に来た印象として「経済がガタガタである」とは実感できないでしょう。
日本は、成熟社会で成長率は低いが世界的に非常に良い国です。

例をあげていくと、
一人当たりのGDPは47000ドル、米国は48000ドルです。 アメリカ人の所得格差
が大きいため、平均的な日本人はアメリカ人より豊かであるということです。
※)日米のGDPについては最後の注を参照

1年間になんらかの犯罪に巻き込まれる可能性は日本は10%であることに対し米国は30%。
国土を見ても、森林の面積が国土の65%弱であり、放牧に利用するため森林を伐採してきた
欧州よりもずっと広い。
また、日本の平均寿命は83歳で、79歳の米国や他の先進諸国の多くより長い。
さまざまな数値が日本の良さを示しています。

■結論
最後にもう一度強調したいが、黒田日銀新総裁には「インフレターゲットのこだわるな」
と言いたい。
どんなに緩和しても、経済の刺激には役立つが、インフレは発生しないでしょう。
「金融緩和が足りないからインフレが発生しない」と誤った考えに陥ると、より大規模に
金融緩和を行い、何がなんでもインフレターゲットを達成しようとする。
そのような緩和政策を継続していくと資産バブルが発生する可能性があります。
これは非常に経済にとって危険です。

2.0%成長の達成は、は今年および来年は十分可能だと思いますが、、
日本経済は成熟しており十分豊かです。 その後の成長は1.0%程度で十分であると思います。


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※) 日米のGDPの値については発表する機関によりその計数が異なる。
 IMF発表の2012年の一人当たりGDPは米国= 48,328ドル、日本は=45,870ドル
参考⇒  http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4540.html

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